糸島自然研究会 2008年9月例会報告 [野外観察]樫原湿原(9月14日)

若宮八恵
 平成20年9月14日(日)晴 台風13号の影響で、前日の夕方から雨だったので、当日朝、筑前前原駅南口に集まり相談するつもりだったが、雨の心配もなく実行を決定した。
 当日の参加者は14名。(小1・幼児の2名含む)4台の車で、金貞さんに先導をお願いして、午前8時半に出発、白糸の瀧に向かった。その瀧の手前から長野峠のほうへ左折し、次に、麻奈古(まなご)で右折、七山村の方へ約2.5K進み、山端入口(やんばいりぐち)の案内板から左折して湿原へ、山中の車道を走行しながら気がつくと、両側に赤いツリフネソウの花が、群れ咲いて、イタドリの白い花も見えて歓声を挙げたくなった。
 対向車の通行に安全な箇所に停車し、休憩。外に出てみると、稲田には稲穂が垂れ、あたりには、アキノノゲシ、キツネノマゴ、ベニバナボロギク、アレチマツヨイグサ、ネムの木には、クズが絡みつき、それぞれに、特徴のある花をつけており、雌雄異株のカナムグラの雄花は淡緑色で円鱗状に咲き、雌花は苞に包まれポツプ状になっていた。ネコハギは地面を這い、ヤブマメも絡みついている。忙しい毎日のなかで、花野に遊ぷのも久しぶりだ。ここからは、湿原はすぐだった。ミヤマウズラを見たりしながら午前10時頃に到着した。
 管理事務所の前の広場に集合して頂き、「植物、昆虫などを採らない、持ち帰らない!道以外の場所には入らない!→の順路に歩き、約1時間半観察して、この広場に集合する」事をお願いし湿原の観察に向かった。
 真っ先に目に入ったのは、キキョウ科のサワギキョウが、湿原に沢山直立して、濃紫色の花が咲き、アゲハや、アカタテハ蝶が飛び交っている。水面にヒツジグサの蕾も二つ三つ見える。振り向くと、ワレモコウの花が、微風に揺れ、コウゾリナは黄色い花をつけ、陽がさして来て、いい観察日和になった。キセルアザミ(マアザミ)は、直立した茎に頭花をつけて、虫を持っている。沼の岸には、ミズトンボ、ヌマトラノオ、コバギボウシ、・ゲンノショウコ、アキノウナギツカミ、ミゾソバ等次々に広がる。
 実は、9月は、宗像の城山登山の予定だったのを、今年の厳しい暑さ続きに、急進、樫原湿原に変更したので、どんな植物があるのか?と、不安を抱いていたのが、完全に吹っ切れた。
 サワヒヨドリ、ナンテンハギ、ナンバンギセル、モウセンゴケ、オミナエシ、ノダケ、サイヨウシャジン、シラヤマギク、ビヨドリバナ、サケバビヨドリ、次々に、みんな見覚えのある花が見られて何という幸せ!浅い水中には、シロイヌノヒゲの小さい花が沢山広がる。キガンピの細く黄色い花が、心を引く。
 足元の草むらからは、ハラオカメコオロギ、ヒゲシロスズ等の虫が鳴き、樹上を飛びながらヤマガラ、エナガの鳴き声もしている。カワセミも、草陰にいるだろう。ユウスゲ、コオニユリには黒い種子がこぼれそうに、大きな実が沢山付いていた。水中に、ギンブナが見え、ショウジョウトンボが見つかる。この湿原のあたりには、ウスバキトンボが、沢山群れ飛んでいた。林縁の方へ、ゆっくり歩いて行くと、水面近くには、キイトトンボ、モノサシトンボが見つかり、おもわず声を挙げると、瀬知さんがカメラを向けた。どこかで、ツチガエルの声も聞こえ、シズイもその辺りに多く、茎の断面は、三角形との事。ヒツジグサも、時間が経ってきて花が開きかけている。少し離れた池の中央にサギソウが、見つかり驚いていたら、近くにおられた係りの方が、「大体、8月お盆過ぎ頃には、花は終わるのが、今年は、まだ残っているので、地球温暖化の影響なのか気になります。」との説明に、最近気になる事実がここにも現実になっていると思うと、複雑な思いになった。
 いろんな種類の植物との成長を助け合って、昆虫たちも寄って来るし、クモもその仲間だろう。ジョロウグモも草むらに、見事な網を張り巡らし、きれいなカクレオビをのせていた。林縁には、ママコナの赤い花、飯粒が2つならんでいるように見えるのが、名の由来とか。ヤマイモには、まだ小さなムカゴもあった。
 予定の時刻に、観察をすませて、全員揃った所でカメラにおさまり、休憩所に休んで昼食を済ませた。少し離れた道路側の高い樹に赤い実を沢山見つけて、結局ゴンズイの実で決着した。帰路は、観音の瀧の方へは回らずに、12時40分頃に往路と同じコースを、ミーンミーンと鳴く蝉の声を聞きながら、湿原を後にした。田んぼには稲刈りの機械が早くも入っており、心配だった雨に降られる事も無く、事故にもあわず終了した。
 参考図書 益村聖著 九州の花図鑑

カナムグラの雌花                カナムグラの雄花


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